調理 · 強火、焼き色
焼き付け(シアリング)
焼き付け(シアリング)とは、肉の表面を高温、ふつうは200–260 °C / 390–500 °Fで短時間焼き、メイラード反応で茶色い焼き色の膜をつくることです。焼き色は色、香ばしい香り、柔らかい中身と対照的なしっかりした外側をもたらしますが、1世紀以上信じられてきた説とは違い、肉汁を閉じ込めるわけではありません。
早わかり
- 目的
- 焼き色の膜(メイラード反応)。肉汁を閉じ込めることではない
- 加熱面の温度
- 200–260 °C / 390–500 °F
- 時間
- 片面1–3分
- 油
- 精製油、発煙点200 °C / 390 °F以上

調理法ではなく、ひとつの工程
焼き付けとは、肉の表面を高温で茶色く焼くことです。完結した調理法というより工程のひとつで、薄いステーキなら焼き付けだけで火が通りますが、厚いステーキはリバースシアや低温調理(スーヴィード)のあとのように、穏やかな加熱の前、後、または途中に焼き付けます。目的は焼き色の膜、つまり色と香ばしい香り、そして柔らかい中身と対照的な、締まって少しカリッとした食感です。
焼き色はメイラード反応によるもので、約140 °C / 284 °Fを超える乾いた表面が必要です。ステーキの水気をふくことから鍋の選び方まで、焼き付けの技術はすべて、表面を水の沸点より上にすばやく上げ、その温度を保つための工夫です。
温度の高さより、熱の量
大事なのは加熱面の温度だけでなく、どれだけの熱を送り込めるかです。冷たいステーキを金属にのせると、すぐに熱を奪い、蒸発させなければならない水分を出します。薄い鍋や軽い鍋は急に冷え、ステーキは蒸し焼きになります。厚い鋳鉄や厚手の鉄(カーボンスチール)は大量の熱をため、ゆっくりですが着実に回復します。アルミ芯のステンレスは均一に熱くなりますが、ためられる熱は少なめです。炭火の上のグリルは熱の大半を放射(輻射)で伝えるので、接触しなくても焼き色がつき、網が当たらない部分にも熱が届きます。
油脂は助けになります。薄い油の膜が、凹凸のあるステーキと金属の間の細かいすき間を埋めるので、出っ張った部分だけでなく表面全体に伝導で熱が届きます。油はその温度に耐えなければなりません。発煙点を超えると刺激臭のある物質に分解し、やがて発火します。
加熱面の比較
| 加熱面 | 熱の伝わり方 | 長所 | 短所 |
|---|---|---|---|
| 鋳鉄のスキレット | 伝導、蓄熱量が大きい | 均一で深い焼き色。ステーキを入れても温度が下がりにくい | 重い。温まるのが遅い。小さいコンロではむらが出る |
| 鉄(カーボンスチール)のフライパン | 伝導、蓄熱量が十分 | 鋳鉄より軽く、焼き色は同程度 | 油ならしが必要。薄いものは冷めやすい |
| プランチャ / 鉄板 | 広い平面からの伝導 | 多くのステーキを焼ける。接触が均一 | 薄い板は一度に多く焼くと熱が足りなくなる |
| 炭火のグリル | 放射と網からの接触 | 乾いた熱、燻香、鍋に油を引かずに焼き色がつく | もともと熱にむらがある。火床の区分けと注意が必要 |
| ガスグリル | 放射と対流、燃焼ガスに水分が多い | 火力の調整が簡単 | 燃焼で出る水分と弱い放射熱のため、焼き色が淡くなる |
油と発煙点
発煙点は精製度と鮮度によって変わります。下の数値は一般に公表されている目安の範囲です。未精製の油や普通のバターは、精製したものよりずっと低い温度で煙が出ます。バターは最後に、火を弱めてから加えて肉にかけるのが向いています。そうすれば乳固形分が焦げずに色づきます。
| 油脂 | 発煙点の目安 | 焼き付けへの向き |
|---|---|---|
| 精製アボカドオイル | 250–270 °C 480–520 °F | とても向く |
| 精製した落花生油、ひまわり油、米油 | 225–235 °C 435–455 °F | とても向く |
| 精製キャノーラ油(菜種油) | 200–230 °C 390–445 °F | 向く |
| 澄ましバター、ギー | 230–250 °C 445–480 °F | 向く。バターの風味 |
| 牛脂 | 約205 °C 400 °F | 向く。牛肉らしい風味 |
| エキストラバージンオリーブオイル | 約190–210 °C 375–410 °F | 中火まで |
| バター(無加工) | 約150 °C 300 °F | 最後にかける用。最初の焼き付けには向かない |
あなたのステーキ:時間と温度
厚さ、焼き加減、焼き方を設定すると、分数、火から下ろす温度、休ませる時間がそれに合わせて変わります。Steakpediaの表と同じ数字です。
計画のための目安で、保証ではありません。塊も、精肉の担当者も、グリルもそれぞれ違います。入力した内容がこのページの外に出ることはありません。 タイマーと開始時刻プランナーつきの計算ツール全体 →
手順
- ステーキの水気をしっかりふき、焼く40分以上前か、焼く直前に塩をふります。
- フライパンかプランチャを空のまま中強火で5–10分熱し、水を一滴落とすと転がって1〜2秒で蒸発する状態にします。グリルの場合は、炭が細かい白い灰で覆われるまで待ちます。
- フライパンに発煙点の高い油を薄く引き(グリルではステーキに油を塗り)、ステーキを向こう側に向けて置きます。
- 自然にはがれるまで動かしません。ふつうは45–90秒です。そのあとは1分ほどごとに返し、両面が濃い茶色になり、中心が目標より数度低いところまで焼きます。
- トングでステーキを立てて持ち、脂の縁と厚い側面も焼き付けます。
- 温度計で中心温度を確かめ、温度表に従って火から下ろします。
「肉汁を閉じ込める」という神話
焼き付けでステーキが「閉じる」という考えは、ふつうドイツの化学者ユストゥス・フォン・リービッヒにさかのぼるとされます。彼は19世紀半ばに、短時間の高温の焼き付けで表面のたんぱく質が固まって壁になり、肉汁を中にとどめると主張しました。これが料理書の常識になりました。1930年代以降の実験は、それが誤りであることをくり返し示しています。焼き付けたステーキは、同じ中心温度まで焼いた焼き付けないステーキと同じだけ水分を失い、表面がより熱くなるため、少し多く失うことさえあります。焼き付けるときのジュウジュウという音は、水分が出ていく音です。
ジューシーさを決めるのは、到達した中心温度と、そこまで均一に火が入ったかどうかです。焼き付けをする価値があるのは、風味を生むからであって、肉汁を守るからではありません。
蒸し焼き、煙、押しつけ
よくある失敗は次のとおりです。鍋が十分に熱くない、またはステーキに対して小さすぎて、肉が蒸し焼きになる。オリーブオイルやバターを焼き付けの最高温度で使い、煙が出て苦くなる。ヘラでステーキを押しつけ、肉汁を絞り出すだけで焼き色には何の効果もない。とても厚いステーキを焼き付けだけで焼き、焼き色の下に灰色の層が広く残って中心が生のままになる。そして換気扇を止めたまま焼くこと。煙はこの工程の一部で、換気が必要です。
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よくある質問
ステーキを焼き付けると肉汁は閉じ込められますか?
いいえ。実験では、焼き付けたステーキは焼き付けないものと同じだけ、あるいは少し多く水分を失います。焼き付けはメイラード反応で風味と食感を生みます。
ステーキの焼き付けに向いている油は?
発煙点が約200 °C / 390 °F以上の精製油で、アボカドオイル、落花生油、ひまわり油、米油、キャノーラ油などです。澄ましバターや牛脂も使えます。
ステーキの焼き付けは片面何分?
ふつうは強火で片面1–3分で、焼き色が濃い茶色になるまで返しながら焼きます。厚いステーキには、穏やかに加熱する工程も必要です。
バターで焼き付けてもいいですか?
普通のバターは約150 °C / 300 °Fで焦げます。焼き付けは油で行い、最後に火を弱めてからバターを加えて肉にかけます。
出典
3
- McGee, Harold. On Food and Cooking: The Science and Lore of the Kitchen, rev. ed. New York: Scribner, 2004.
- Myhrvold, Nathan; Young, Chris; Bilet, Maxime. Modernist Cuisine: The Art and Science of Cooking. Bellevue: The Cooking Lab, 2011.
- López-Alt, J. Kenji. The Food Lab: Better Home Cooking Through Science. New York: W. W. Norton, 2015.