メイン料理 · 塩、こしょう、オーク
テキサス・ブリスケット
テキサス・ブリスケットは、牛の肩バラ(ブリスケット)を丸ごと塩と粗挽き黒こしょうで味付けし、低温のピットでオークの煙に10〜16時間かける料理で、セントラル・テキサスのバーベキューの中心です。長い燻煙でコラーゲンはゼラチンに変わり、スパイス、脂、煙は乾いて「バーク」と呼ばれる黒い外皮になります。
早わかり
- 発祥
- アメリカ、セントラル・テキサス
- 部位
- 丸ごとのパッカーブリスケット:ポイントとフラット
- ピット
- 107–121 °C / 225–250 °F、ポストオークの煙
- 焼き上がり
- 温度計がすっと入るやわらかさ、約93–96 °C / 200–205 °F
- 時間
- 加熱10〜16時間、休ませ1〜4時間
- 分量
- 12〜15人分(焼き上がり約3 kg / 6.5 lb)

フラット、ポイント、バーク
ブリスケットは牛の胸の筋肉(日本でいう肩バラ)で、大きく硬く、よく動かす部位なので結合組織がたくさんあります。手早く焼くと噛み切りにくく、煙の中でほぼ一日かけてゆっくり火を通すと、手でほぐせるほどやわらかくなりながらスライスの形も保ちます。セントラル・テキサス式ではパッカーと呼ばれる丸ごとのブリスケットを使い、二つの筋肉を両方とも焼きます。赤身で薄いフラットと、厚く脂の多いポイントで、そのあいだを脂の層が分けています。ブリスケットも参照してください。
味付けはあえて最小限で、ふつうは粗塩と粗挽き黒こしょうを同量ずつ使います。風味は煙と溶けた脂、そして何時間もかけてスパイス、脂、煙が表面で乾いてできる黒い外皮、バークから生まれます。
ドイツ系とチェコ系の精肉店
セントラル・テキサスのバーベキューは、19世紀末から20世紀初めにロックハート、ルーリング、エルジン、テイラーといった町でドイツ系やチェコ系の移民が開いた精肉店から生まれました。肉屋は売れ残った肉やソーセージを燻製にし、肉屋の包み紙にのせて量り売りし、パンやクラッカー、ピクルス、玉ねぎを添えました。この形式は今も残っています。ロブ・ウォルシュのLegends of Texas Barbecue Cookbookは、この伝統を東テキサス(アフリカ系アメリカ人)、南テキサス(バルバコア)、西テキサス(直火の「カウボーイ」式)のスタイルとあわせてたどっています。
ブリスケットは、もともと看板の肉ではありませんでした。肩肉(ショルダークロッド)などの部位が一般的でした。主役になったのは20世紀後半で、この変化はよく箱詰め牛肉(ボックスドビーフ)の普及と結びつけて語られます。精肉店がブリスケットを単品で仕入れられるようになったからです。2000年代以降、アーロン・フランクリンとジョーダン・マッケイのFranklin Barbecue(2015年)に描かれた新しい世代のピットマスターたちが、塩とこしょうだけでオークの煙にかけるブリスケットを世界に広めました。
材料
| 材料 | 分量 | メモ |
|---|---|---|
| ブリスケット丸ごと(パッカー) | 掃除前で5.5–7 kg / 12–15 lb | ポイントとフラットが一体のもの(IMPS 120)。フラットがしなやかに曲がるものがよい |
| 粗いコーシャーソルト | 60 g / 約½カップ | または掃除後の重量の約1% |
| 粗挽き黒こしょう | 60 g / 約¾カップ | 「ブッチャーズグラインド」または16メッシュ |
| ポストオーク(またはほかのオーク)の割り薪 | 10–15 kg / 22–33 lb | よく乾かした薪 |
| ワックスなしのブッチャーペーパー | 1ロール、幅45 cm / 18 in | 包むため |
| 牛脂(タロー) | 100 g / ½カップ | お好みで。紙に塗る |
作り方
- 冷えた状態のブリスケットを掃除します。硬い脂と筋膜を取り、表面の脂は約6 mm / ¼ inの厚さに残し、ポイントとフラットのあいだの硬い脂を薄くして、焦げやすい薄い端を丸く切り落とします。
- 塩とこしょうを混ぜ、すべての面に均一にまぶします。焼く直前でも、前の晩でもかまいません。
- スモーカーに火を入れ、小さく勢いのあるきれいな火でピットを107–121 °C / 225–250 °Fに安定させます。煙は白く濃いものではなく、薄く青みがかったものにします。もっと高い温度、最高135 °C / 275 °Fで焼く人もいます。
- ブリスケットを調理室に入れます。ふつうは厚いポイント側を火室に向けます。30〜60分ごとに薪を1本足し、ふたは閉めておきます。
- 5〜7時間でバークが固まり、内部温度は65–74 °C / 150–165 °Fあたりで止まります。ブリスケットをブッチャーペーパーでぴったり包み(お好みで牛脂を塗って)、ピットに戻します。
- フラットのいちばん厚いところが「プローブテンダー」、つまり温度計がほとんど抵抗なく入るまで焼きます。ふつうは93–96 °C / 200–205 °Fです。決めるのは数字ではなく、やわらかさです。
- 包んだまま最低1時間、できれば2〜4時間休ませます。保温箱か、60–65 °C / 140–150 °Fに保ったオーブンに入れ、安全な保温温度を下回らないようにします。
- ポイントとフラットを切り分けます。フラットは繊維を断つように鉛筆ほどの厚さに切ります。ポイントは90°回して(繊維の向きが違うため)厚めに切るか、角切りにします。
ストールと包み
焼き始めて数時間たつと、ブリスケットの内部温度は何時間も上がらなくなることがよくあります。このストールは気化冷却によるものです。表面に出てきた水分が蒸発し、ピットが熱を与えるのと同じ速さで熱を奪います。肌の汗と同じしくみです。表面が十分に乾くか、蒸発がさえぎられると終わります。
包むと蒸発がさえぎられます。競技会で「テキサス・クラッチ」として広まったアルミホイルがいちばん効果的ですが、蒸気でバークがやわらかくなります。ワックスなしのブッチャーペーパーは蒸発を遅らせつつ一部の蒸気を逃がすので、外皮がしっかり残ります。そのあいだに、ハロルド・マギーが説明するように、コラーゲンは約70 °C / 160 °F以上に長くさらされて初めて、ゆっくりとゼラチンに溶けていきます。速さよりもピットで過ごす時間が大事なのはそのためです。
地域の違い:チョップド、バーントエンド、バルバコア
テキサスの中でも、東テキサスのブリスケットは刻んでソースをからめ、バンズにはさむことが多く、南テキサスには伝統的に穴の中で調理する牛の頭のバルバコアがあります。西テキサスには、間接熱で燻すのではなくメスキートの炭火で焼く人もいます。カンザスシティでは脂の多いポイントをバーントエンドにします。角切りにしてソースをからめ、もう一度スモーカーに戻したものです。薪を燃やすオフセットスモーカーが古典的なピットで、ペレットグリル、カマド型グリル、電気スモーカーでも、火の調整はしにくいものの近い仕上がりになります。ユダヤ料理の蒸し煮ブリスケットやコンビーフは、同じ部位で作る別の料理です。
量り売りで、ブッチャーペーパーにのせて
セントラル・テキサスのブリスケットは量り売りで、ブッチャーペーパーにのせ、白い食パンかソルティンクラッカー、ディルピクルス、生の玉ねぎを添えて出されます。店によってはピントビーンズやポテトサラダも付きます。ソースがあれば別添えで、伝統的な精肉店の多くはソースを置いていませんでした。客はふつうリーン(フラットの赤身)とモイストまたはファッティ(ポイントの脂身)から選びます。
よくある失敗:脂を取りすぎてフラットがパサつくこと。くすぶった火から出る、白く濃い刺激のある煙。やわらかさを確かめずに目標温度で引き上げること。休ませずに切り、まな板に肉汁を流してしまうこと。繊維に沿って切り、やわらかいブリスケットまで筋っぽくすること。そしてブリスケット全体を前もって切ってしまうこと。切ったとたん、数分で乾いてしまいます。
続けて読む
- 煮込み · テキサス、ボウル・オブ・レッドチリコンカンテキサスの「ボウル・オブ・レッド」:肩肉と干し唐辛子を何時間も煮込む料理、サンアントニオのチリクイーン、豆をめぐる論争。
- サンドイッチ · 厚焼きか、スマッシュかハンバーガー脂20 %のチャックのひき肉、柔らかいバンズ、そして誰にも証明できない起源。厚焼きでもスマッシュでも、アメリカのハンバーガー。
- メイン料理 · ラ・プラタ川流域の熾火アサードグリルの下にかき入れる熾火、粗塩、そしてチョリソ、内臓、大きな部位という順番。
- 調理 · 木の煙と低温燻製(スモーク)温燻と冷燻、オークからメスキートまで、スモークリング、ストール、包み方:木の煙が牛肉に香りをつけ、火を通すしくみ。
よくある質問
ブリスケットは何度で焼き上がりですか?
ふつうはフラットが約93–96 °C / 200–205 °Fに達し、温度計がほとんど抵抗なく入ったときです。本当の目安はやわらかさで、数字は手がかりです。
ブリスケットの燻製には何時間かかりますか?
107–121 °C / 225–250 °Fで、丸ごとのパッカーブリスケットはふつう10〜16時間かかり、さらに1〜4時間休ませます。
ブリスケットはなぜストールするのですか?
表面の水分が蒸発して、ピットが温めるのと同じ速さで肉を冷やすからです。ブッチャーペーパーやアルミホイルで包むとストールが短くなります。
ポイントとフラットの違いは何ですか?
フラットは赤身が多く薄い筋肉で、「リーン」のブリスケットとして切られます。ポイントはその上にのっていて脂とサシが多く、「モイスト」のブリスケットやバーントエンドとして出されます。
出典
4
- McGee, Harold. On Food and Cooking: The Science and Lore of the Kitchen, rev. ed. New York: Scribner, 2004.
- USDA Agricultural Marketing Service. Institutional Meat Purchase Specifications: Fresh Beef Series 100. Washington, DC, 2014. www.ams.usda.gov/sites/default/files/media/IMPS_100_Fresh_Beef%5B1%5D.pdf
- Franklin, Aaron; Mackay, Jordan. Franklin Barbecue: A Meat-Smoking Manifesto. Berkeley: Ten Speed Press, 2015.
- Walsh, Robb. Legends of Texas Barbecue Cookbook: Recipes and Recollections from the Pitmasters. San Francisco: Chronicle Books, 2002.